技術メモ

役に立てる技術的な何か、時々自分用の覚書。幅広く色々なことに興味があります。

統計検定1級に合格しました

以前統計応用については合格していたのですが、統計数理は何度か落ちていたためN度目のリベンジでした。この度2022年度統計数理も合格することができたのではれて統計検定1級を名乗れるようになりました。
月並みですが、自分なりに対策したことを書き残しておこうと思います。

理論

統計検定1級の問題は非常に質がよく、理論をきちんと追って理解していれば何を聞きたいのかがなんとなくわかるようになっています。
むやみな計算問題ではなく問題の背景があるような問題が多いです。
その点でも、理論は使えるだけでなくきちんと体系立てて理解しておく必要があると思います。

一言で理論を抑えると言ってもその範囲は多岐にわたるので、ここでは少なくとも最低限絶対に抑えておかないといけないと思うポイントを挙げておきます。

確率分布
  • 確率変数の変数変換・合成

畳み込み積分を使った単純な和、ヤコビアンを使った確率変数の和・積・商、確率母関数を使った確率変数の和を身体に染み込むまで演習しましょう。

  • 確率分布の変形

よく言われますが、いわゆる確率分布曼荼羅を写経して理解して書けるようにしましょう。自然とガンマ分布は何も見なくても書けるようになります。

  • 確率分布の期待値・分散

確率母関数による期待値の計算方法など、代表的な確率分布の期待値と分散は計算できないと話になりません。

定量の計算および検定量の評価
  • クラメールラオの不等式の導出

フィッシャー情報量の導出と呼ぶべきか、不偏推定量の分散の下限の導出です。

  • 最尤法

最尤法は基本的な内容ですが頻出です。最尤推定量を求めさせた上で不偏性を論じたり他の統計量と比較させたりするような問題が定番です。

よくあるのが不偏推定量であることの証明、最尤推定量の分散を求めさせるなどは頻出です。

検定論
  • ネイマンピアソンの補題の証明

問題として直接出題されることはありませんが、問題背景になることもありますし、統計のスペシャリストを名乗るなら抑えておくべきでしょう。

  • 尤度比検定・ワルド検定・スコア検定・適合度検定

適合度検定も何かと出題されます。特に尤度比検定はネイマンピアソンの補題の土台になっているので大事です。

  • z検定・F検定・t検定

統計応用につながる話ですが、できれば厳密な証明はなくともネイマンピアソンの補題から導出される流れは抑えておきたいです。

  • 分散分析

分散分析っぽい問題も統計数理で出題されます。

その他

符号検定・マンホイットニーのU検定・ウィルコクソンの順位和検定(できれば導出 )など、
一度符号検定の導出の問題が出題されました。必ずしも導出できる必要はありませんが、導出できて損はないと思います。

  • 近似論

デルタ法、正規近似とその精度など、細かい話は過去問を解きながら補う感じで良いと思います。

教材

最初に挑んで落ちた時は何もわからず公式教科書を使用していましたが、
正直公式教科書はわかっている人がそうそうそうだよねと確認するために読むものです。
初学者が読むものではありません。もう一度記憶をリセットして勉強し直すなら副読本として買いはしますが、この本の通りに勉強しようとはなりません。とはいえ、公式が出しているので内容に過不足がないという点ではすごく頼もしいです。

■竹村本
公式教科書で失敗した経験を生かして教科書選びは慎重に自分にあったものを選ぶようにしました。
その結果メイン教材としては竹村本に落ち着きました。統計検定1級の対策本としては比較的有名な本です。

合う合わないは人によりますが、自分にとってはちょうどよい難しさで肌にあっていました。

■黒木本
副教材として以下を使用しました

こちらは上の竹村本より易しめです。意外と使っているという人はいませんが、程よく証明も載っていて良書だと思います。竹村本でよくわからないところを補助的に読む感じで使っていました。

■久保川本

こちらは上の竹村本より難しめです。統計検定の教材として最も有名な本ではないでしょうか。竹村本で証明が飛ばされていたりもやもやするところを深堀りする形で使っていました。付属の演習問題を解くのが統計検定対策として一般的らしいですが、解説が不十分なため自分は使いませでした。


あとはひたすら過去問でした。
何度か落ちているので当然といえば当然ですが6年分は過去問を解きました。

ただ、統計検定1級について苦労したこととして、解説を読んでもよくわからない・1つの問題が解けても他に応用することができない(過学習してしまう)という悩みがあります。正直合格した今でもこの悩みはどうすればいいのか正解はわかりません、自分自身過去問に過学習してしまっているという自覚があり統計のスペシャリストと名乗るにはおこがましいと感じていますが、今後も研鑽していこうと思っています。