二項分布の試行回数を無限大に大きくしていくと正規分布に近づくことが知られている。
しかし、その証明は意外と知られていない。(中心極限定理でも証明は可能ではあるが、回りくどすぎて初学者には不親切)
やが出てくるのがどうしても不思議で、自分なりに解こうとしたり調べてみた。
ようやくわかってきたので、自分的にわかりやすかった方法を記録しておく。
ただ、これはわかりやすさ重視の証明法らしい。
数学的に厳密じゃないところとか突っ込んでくれると嬉しいです。
証明
方針
二項分布の対数をとった関数をTaylor展開し二次の項まで近似すると正規分布の対数になることを示す。
証明
二項分布の自然対数をとる.
ここでTaylor展開を考えるにあたり,
の項について考える.
補題として,
[補題1]
充分に大きい自然数に対して
が成り立つことを示す。
[補題1証明]
2以上の自然数に対して,は単調増加であるので
が成り立つ.
したがって
十分に大きいに対して
である.*1
上式からはさみうちの原理より、
となる.
よって
[補題1証明終]
補題1の結果を元の式に代入数する.
が十分に大きいとき
となる.
この変形によって微分を考えることができて,
一階微分、二階微分はそれぞれ
となる.
を平均値の周りでTaylor展開する.
ただし、平均値と分散は二項分布の性質から定まる(平均 、 分散 )
ここで,第一項は定数なので、とおいておく.
(近似の過程で確率密度の制約条件「定義域全域で積分すると1になる」が抜けてしまうため、改めて係数を求める必要がある.)
求める確率分布をとすると,
これで変数部分まで求めることができた.
最後に,
先ほども述べたように,確率密度の制約条件を満たすよう係数を決定しなければいけない.
すなわち,
となるを求める.
補題として、
[補題2]
を示す.(※ガウス積分)
[補題2証明]
とおくと、証明すべきは
である.
とおくと,この積分領域は平面上における一辺の正方形である.
一方で次のような扇状の積分範囲を定義すると,
次のような大小関係が成り立つ
ここで,
とする.
となることから,はさみうちの原理よりとなることを示す.
を極座標表示に変換して計算する
として,
が十分に大きいとき,
であることがわかる.
はさみうちの原理より,
が示された.
[補題2証明終]
補題2の結果から,係数を求める.
と変数変換することで,
から,
が求まる.
以上から,
となり,二項分布の極限は正規分布に近似されることが証明された.
[証明終]
*1:コメントに証明のあらすじを書いてくれている方がいます。ありがとうございます。